岡山大学大学院 環境生命科学研究科

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穀物の「芒(ぼう)」ができなくなるしくみの解明

2022年05月27日

◆発表のポイント

  • イネ科の作物や雑草はがなる時、「芒(「ぼう」あるいは「のぎ」、「のげ」)と呼ばれる細長い突起を先端に作り、外敵を避けたりして生存の工夫をします。ぼうがあったりなかったりするしくみは遺伝子によって決まると考えられています。
  • 今回、ソルガム(別名:高黍たかきび高粱こうりゃん、もろこし)という穀物を用いて、ぼうをなくす遺伝子があることを突き止めました。
  • この遺伝子でソルガムだけでなくコメのぼうを無くすこともできるので、収穫の手間を省くことや機能性を高めた品種の開発が期待されます。

 岡山大学資源植物科学研究所の坂本亘教授は、東京大学大学院農学生命科学研究科のグループらと共同で、バイオマス作物ソルガム(Sorghum bicolor)の「ぼう」というの突起を作らなくする珍しい遺伝子を明らかにしました。

 本研究成果は5月27日午後8時(日本時間)に、国際学術誌「Plant and Cell Physiology」オンライン版に掲載されます。

 今回見つかったぼうを作らなくする遺伝子は、ソルガムが栽培される過程で「遺伝子重複」という現象により出現し、その遺伝子を持つ品種は無芒むぼうとなるため栽培しやすく、各地の品種に広まっていったと考えられます。穀物の穂に特徴的な構造ができる現象を明らかにするだけでなく、今回、この遺伝子をぼうがあるイネ品種に導入するとぼうをなくすことができることもわかりました。ぼうのない品種の開発などに利用され、穀物栽培の効率化や機能性の向上に役立つことが期待されます。

◆研究者からひとこと

今回論文発表する穀物の芒を作らなくする遺伝子の研究は、大型でバイオマス利用が期待される作物であるソルガムを用いて明らかになった成果の1つです。ソルガムの実はグルテンフリーの機能性食材として、また大きな茎葉は家畜の飼料だけでなく、バイオエネルギーやバイオ素材の原料としての利活用も期待されています。21世紀の作物・バイオ素材として注目されています。

ちなみに岡山名物「きびだんご」の「きび」はもともと「たかきび」に由来すると言われていますから、ソルガムのことです。



■論文情報

論 文 名:DOMINANT AWN INHIBITOR encodes the ALOG protein originating from gene duplication and inhibits awn elongation by suppressing cell proliferation and elongation in sorghum

掲 載 紙:Plant and Cell Physiology

著  者:Hideki Takanashi, Hiromi Kajiya-Kanegae, Asuka Nishimura, Junko Yamada, Motoyuki Ishimori, Masaaki Kobayashi, Kentaro Yano, Hiroyoshi Iwata, Nobuhiro Tsutsumi*, and Wataru Sakamoto* (*責任著者)

D O I: 10.1093/pcp/pcac057

U R L: https://doi.org/10.1093/pcp/pcac057



■研究資金

 本研究は、日本学術振興会科学研究費(基盤研究B)、公益社団法人大原奨農会の研究助成により行われました。

<詳しい研究内容について>

下記の添付ファイルを参照


<お問い合わせ>

岡山大学資源植物科学研究所

光環境適応研究グループ

教授 坂本 亘

(電話番号)086-434-1206

(HP)岡山大学 資源植物科学研究所

添付ファイル

press20220527-11.pdf

年度