岡山大学大学院 環境生命科学研究科

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玉ねぎに含まれるケルセチン配糖体の腸内細菌代謝物の肝細胞保護効果とその分子機構を解明

2022年02月17日

◆発表のポイント

  • 玉ねぎなどに多く含まれるポリフェノール(ケルセチン配糖体)が、腸内細菌叢による代謝を介して、健康機能に寄与する可能性を見出しました。
  • ケルセチン配糖体の主要な腸内細菌代謝物であるOPACが、エタノール代謝で生成する毒性物質アセトアルデヒドからの細胞を保護することを明らかにし、その分子メカニズムを一部解明しました。
  • 食品成分のもつ機能性/安全性への理解に貢献するだけでなく、本研究で明らかとなった腸内細菌代謝物の細胞保護作用に基づいた新たな機能性食品・サプリメントの開発が期待されます。

 岡山大学学術研究院環境生命科学学域(農)の中村宜督教授、中村俊之助教、同大学院環境生命科学研究科修了生Liu Yujia博士(現大連工業大学講師)、同研究科博士後期課程明神匠大学院生らの研究グループは、培養肝細胞モデルを用いて、玉ねぎなどに多く含まれるポリフェノール(ケルセチン配糖体)の腸内細菌代謝物のひとつである3-ヒドロキシフェニル酢酸(OPAC)が、エタノール代謝で生成する毒性物質アセトアルデヒドから細胞を保護することを明らかにしました。さらに、OPACは多くのポリフェノールとは異なり、抗酸化作用を介さないユニークな経路を介して、アセトアルデヒドの解毒を亢進することも見出し、細胞保護の分子メカニズムの一部を解明しました。
 本研究で明らかとなった食品成分代謝物の新たな機能性とその分子機構に関する研究成果は、ポリフェノールの健康増進作用に関して新たな科学的根拠を提供するものであり、食品の機能性や安全性の科学的理解に大きく貢献することが期待されます。さらに、本研究でユニークな機能が明らかになったOPACは、安定で代謝されにくく、末梢に循環したり、多くの臓器に分布したりすることが期待されるため、アルコール毒性に対する細胞保護作用に基づいた新たな機能性食品・サプリメントの開発につながるものと期待されます。
 本研究成果は、2月3日にスイスのオンライン科学雑誌「International Journal of Molecular Science」(MDPI)の特集号「Nutrition and Metabolism in Health and Disease: From Gene to Organism」に掲載されました。

■論文情報
論文名: A Major Intestinal Catabolite of Quercetin Glycosides, 3-Hydroxyphenylacetic Acid, Protects the Hepatocytes from the Acetaldehyde-Induced Cytotoxicity through the Enhancement of the Total Aldehyde Dehydrogenase Activity.
邦題名「ケルセチン配糖体の主要な腸内異化物である3-ヒドロキシフェニル酢酸は総アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性の増強を介して、アセトアルデヒド誘導細胞毒性から肝細胞を保護する」

掲載誌:International Journal of Molecular Science
著者:Yujia Liu, Takumi Myojin, Kexin Li, Ayuki Kurita, Masayuki Seto, Ayano Motoyama, Xiaoyang Liu, Ayano Satoh, Shintaro Munemasa, Yoshiyuki Murata, Toshiyuki Nakamura and Yoshimasa Nakamura
DOI: 10.3390/ijms23031762
発表論文はこちらからご確認できます。
https://doi.org/10.3390/ijms23031762


<詳しい研究内容について>
玉ねぎに含まれるケルセチン配糖体の腸内細菌代謝物の肝細胞保護効果とその分子機構を解明

<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院環境生命科学学域(農)
教授 中村 宜督
(電話番号)086-251-8300 (FAX番号)086-251-8388







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