岡山大学大学院 環境生命科学研究科

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AIが覗き込むトマトゲノム:果実の遺伝子の動きを見抜く~果実が「熟れる」仕組みの緻密なデザイン~

2022年03月08日

◆発表のポイント

  • トマトの全ゲノム配列情報にAIを適用することで、遺伝子発現(遺伝子の「動き」)を予測する技術を開発しました。
  • 果実が「熟れる」際の遺伝子発現にとって鍵となるDNA配列を予測することができました。
  • AIが予測した鍵となるDNA配列を自由に改変することで、果実が熟れる仕組みの緻密なデザインが可能になると期待されます。

 果実の色や甘さ・香りなどの特徴はそれぞれの作物のゲノムに存在する特定の遺伝子の発現(遺伝子の「動き」)によって決定されています。しかし、それら遺伝子の発現パターンはゲノム内の複雑な要素の組み合わせで決まるため、たとえ全ゲノム配列の情報が明らかになっていても予測することは困難なものでした。岡山大学学術研究院環境生命科学学域(農)の赤木剛士研究教授、増田佳苗院生 (D3)、桒田恵理子院生 (M1)は、このたび国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、筑波大学大学院生命環境系、九州大学大学院システム情報科学研究院の共同研究者とともに、本来は写真などの画像・映像や言語に使われることが多いAI技術である深層学習(ディープラーニング)をトマトの全ゲノム情報に適用することで、果実が「熟れる」過程で重要となる遺伝子の発現変化を予測する技術を開発しました。さらに、「説明可能なAI (X-AI)」と呼ばれる技術を活用することで、AIが予測した果実の遺伝子発現にとって重要な鍵となるDNA配列を特定することができました。今後、さらなる「AIとの協働」によって、私たちヒトでは判断が難しい膨大な全ゲノム情報の中にある仕組みを紐解き、その鍵となるDNA配列を自由に改変することで、果実の様々な特徴に関しての緻密なデザインが可能になると期待されます。
 本研究成果は、日本時間3月8日午後9時(米国東部標準時間:3月8日午前7時)、米国の科学雑誌「The Plant Cell」オンラインアドバンス版に掲載されます。

◆研究者からのひとこと

果実の「食べごろ」を一緒に探してみませんか?あなたのアイデア次第で、新しい果実をデザインできるかも!

■論文情報
論 文 名:Genome-wide cis-decoding for expression design in tomato using cistrome data and explainable deep learning
掲 載 紙:The Plant Cell
著  者:Takashi Akagi*, Kanae Masuda*, Eriko Kuwada* (*Contributed equally), Kouki Takeshita, Taiji Kawakatsu, Tohru Ariizumi, Yasutaka Kubo, Koichiro Ushijima, Seiichi Uchida
D O I:10.1093/plcell/koac079

<詳しい研究内容について>
AIが覗き込むトマトゲノム:果実の遺伝子の動きを見抜く~果実が「熟れる」仕組みの緻密なデザイン~


<お問い合わせ>
岡山大学 学術研究院環境生命科学学域
研究教授 赤木 剛士(アカギ タカシ)
(電話番号)086-251-8337



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