岡山大学大学院 環境生命科学研究科

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高山植物は北方起源だけではなかった!?日本列島から北米へと分布を広げた高山植物を世界で初めて発見

2020年07月09日

2020年07月09日



◆発表のポイント

  • 日本列島に生育する高山植物のエゾコザクラが、日本列島から北米へと分布を広げた種(しゅ)であることを明らかにしました。
  • 北米から日本列島に広く分布する北方系の高山植物に、第四紀の氷期に日本列島まで南下したものだけでなく、日本列島から北方へと広がったものがあることを世界で初めて発見しました。
  • 日本列島周辺の高山生態系が過去の気候変動に伴ってどのようにして成立したかを理解するための新しい視点を提唱する意義があり、今後の研究によって日本列島の高山生態系に見られる独自な特徴の解明につながることが期待されます。

 岡山大学資源植物科学研究所の池田啓准教授らのグループは、日本列島の高山帯に生育する高山植物のエゾコザクラ類(エゾコザクラおよびハクサンコザクラ)が、最終氷期(およそ7万~1万年前)以降に日本列島から北米まで分布を広げた種(しゅ)であることを発見しました。本研究成果は7月8日、英国の生物地理学雑誌「Journal of Biogeography(電子版)」で公開されました。
 日本列島の高山植物は、ベーリング海周辺の寒冷な地域に起源する植物が、第四紀の氷期に日本列島へと南下し、温暖な現在は高山帯に取り残された「遺存種」であると考えられています。本研究成果は、高山帯の中でも夏まで雪が多く残る「雪田」周辺に生育するエゾコザクラ類が、最終氷期以降に日本列島からベーリング海を越えて北米まで分布を広げた種であることを明らかにしました。

 本研究成果は、日本列島周辺の高山生態系が過去の気候変動に伴いどのようにして作られてきたかを明らかにすることにつながる新しい発見です。今後、日本起源の高山植物に見られる特徴やそれらの種が進化する要因を明らかにすることで、日本列島の高山生態系に見られる独自な特徴の解明につながると期待されます。


◆研究者からのひとこと

 次世代シーケンサーと呼ばれる最新のDNA解析技術を取り入れたことで、これまでの定説を覆すきれいな結果が出たことには正直驚きました。日本産高山植物の起源は当たり前のように北方起源といわれていますが、実はまだちゃんと分かっていないことを痛感しました。こういう予期せぬ新しい発見があるから研究は面白いですね。
池田准教授

■論文情報論 文 名:East Asian origin of the widespread alpine snow-bed herb, Primula cuneifolia (Primulaceae), in the northern Pacific region 「北太平洋地域の雪田周辺に生育する高山植物エゾコザクラは東アジア起源だった」掲 載 紙:Journal of Biogeography著  者:Hajime Ikeda, Valentin Yakubov, Vyacheslav Barkalov, Kazuhiro Sato, Noriyuki FujiiD O I:10.1111/jbi.13918U R L:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/jbi.13918


<詳しい研究内容について>
高山植物は北方起源だけではなかった!?日本列島から北米へと分布を広げた高山植物を世界で初めて発見


<お問い合わせ>
岡山大学 資源植物科学研究所
准教授 池田 啓
(電話番号)086-434-1238
(FAX番号)086-434-1249








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