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シロイヌナズナから見つかった「免疫抑制因子(内因性サプレッサー)」 植物の免疫制御や、生命現象の本質の解明に迫る発見

◆発表のポイント

  • 健全な植物体から、病原微生物に対する免疫反応を抑制する因子(内因性サプレッサー;endogenous suppressor)を分離・精製することに世界で初めて成功しました。
  • 分離・精製した物質を投与したシロイヌナズナでは免疫反応が抑えられ、本来感染できない病原体による侵入を許し発病するようになったほか、この物質が免疫反応を抑制する標的は、病原体が分泌するサプレッサーのそれとほぼ同じであることが分かりました。
  • 植物の免疫制御に生かせるだけでなく、植物の「自己・非自己識別」という生命現象の本質にも迫り得る重要な発見といえます。

 植物の免疫反応を抑制する病原体由来の物質は「サプレッサー(suppressor)」と呼ばれ、宿主植物に対する病原性と宿主範囲を決める重要な病原性決定因子(determinant of pathogenicity)です。大学院環境生命科学研究科植物病理学研究室の豊田和弘教授は、自然生命科学研究支援センター(多田宏子教授・塩川つぐみ技術職員)と白石友紀博士(岡山大学名誉教授;現岡山県生物科学研究所所長)とともに、シロイヌナズナの健全な植物体から病原体のサプレッサーと同じ作用をもつ物質(内因性サプレッサー;endogenous suppressor)を分離することに世界で初めて成功しました。 分離・精製した物質を投与したシロイヌナズナでは免疫反応が抑えられ、本来感染できない病原体による侵入を許し発病するようになりました。また、本物質はシロイヌナズナの免疫反応に関連する ATPaseや活性酸素種生成などを標的としており、これらは、豊田教授らがこれまでに明らかにしてきたエンドウ褐紋病菌が分泌するサプレッサーの作用点とほとんど同じ(類似)であることが明らかとなりました。
 本成果は、病原体と植物の「共進化(co-evolution)」の謎を解くヒントに留まらず、植物の「自己・非自己識別」という生命現象の本質にも迫り得るものです。
 本研究成果は11月27日、日本植物病理学会英文誌「Journal of General Plant Pathology」の電子版に掲載されました。

◆研究者からのひとこと

 植物自身が病原体に対する免疫反応を抑制する因子を先在的にもっていることは、一見不利に思えますが、過剰な免疫反応を防いだり、「生長」と「免疫(防御)」のトレードオフを最適化する上で重要な役割があると考えられます。本研究の延長線上には、レセプター改変による耐病性付与(免疫反応の人為的制御)やホルモン様分子としての利用(生長調節剤や異種間の接ぎ木補助剤など)も考えられ、応用的価値も高いといえます。
豊田教授

■論文情報論 文 名:Endogenous suppressor(s) in Arabidopsis thaliana
「シロイヌナズナに存在する内因性サプレッサー」
掲 載 紙:Journal of General Plant Pathology著  者:Thanh Luan Mai, Tatsuhiro Kawasaki, Aprilia Nur Fitrianti, Le Thi Phuong, Tsugumi Shiokawa, Hiroko Tada, Hidenori Matsui, Yoshiteru Noutoshi, Mikihiro Yamamoto, Yuki Ichinose, Tomonori Shiraishi, and Kazuhiro ToyodaD O I:10.1007/s10327-019-00897-zU R L:http://link.springer.com/article/10.1007/s10327-019-00897-z
<詳しい研究内容について>
シロイヌナズナから見つかった「免疫抑制因子(内因性サプレッサー)」 植物の免疫制御や、生命現象の本質の解明に迫る発見

<お問い合わせ>
岡山大学大学院環境生命科学研究科(農)
植物病理学研究室
教授 豊田和弘
(電話番号)086-251-8357