岡山大学大学院 環境生命科学研究科

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キウイフルーツが紐解く「植物が性別を手に入れた進化の仕組み」

2019年08月17日

◆発表のポイント

  • キウイフルーツの性別決定遺伝子の一つである「Friendly Boy」を発見しました。
  • キウイフルーツの二つの性決定遺伝子「Shy Girl」と「Friendly Boy」の成立過程を明らかにし、40年以上前に提唱されていた植物における性別の獲得進化理論を証明しました。
  • 人為的に「両性花」キウイフルーツを作出することに成功し、安定的な栽培への展開やこれまで出来なかった組み合わせによる育種が可能になると期待されます。

 「性別」による有性生殖は生物の多様性を維持する最重要システムです。また、農業という観点から見ても、性別は作物の性表現として、栽培や育種など多くの場面で考慮するべき性質です。しかし、植物における性別の決定の仕組みやその成立過程は100年以上も謎に包まれています。岡山大学大学院環境生命科学研究科(農) 赤木剛士准教授は、これまでキウイフルーツを用いた植物の性別決定の仕組みの解明に取り組んでおり、このたび、オス機能の制御を担う性別決定遺伝子を発見し、「Friendly Boy」と命名しました。さらに、赤木准教授らの研究から既に見つかっていたメス機能の制御を担う「Shy Girl」遺伝子とともに、二つの遺伝子の成立過程を明らかにし、40年以上前から提唱されていた「植物が性別を手に入れる進化の仕組み」に関する理論の証明に至ることができました。また、本来は性別を持っているキウイフルーツにおいて、本研究で明らかになった性別決定遺伝子の組み換え・遺伝子編集を行うことで「人為的に両性花を作り出すこと」に成功しました。本研究の成果は今後、作物の性表現を自由自在に制御する技術へと発展していくと期待できます。

 本研究成果は、日本時間8月6日午前0時(英国時間:8月5日午後4時)、英国の科学雑誌「Nature Plants」に掲載されました。

 本研究は、香川大学農学部、京都大学大学院農学研究科、立命館大学グローバルイノベーション研究機構・ニュージーランドPlant & Food Research、カリフォルニア大学デービス校との共同研究として行われました。

◆研究者からのひとこと

私たちのチームでは柿やキウイフルーツなどの果物(果樹作物)を使って、植物における「花の性別決定」の仕組みを研究してきました。花の性別が変われば、実の様子もさまざまに変わります。みなさんの身の回りに「おかしな花、気になる実をつける」柿やキウイフルーツがあればぜひ教えてください。もちろん、それ以外の果物、野菜、花、なんでも大歓迎です。
赤木准教授

■論文情報
論 文 名:Two Y-encoded genes determine sex in kiwifruit
掲 載 紙:Nature Plants
著  者:Takashi Akagi, Sarah M. Pilkington, Erika Varkonyi-Gasic, Isabelle M. Henry, Shigeo S. Sugano, Minori Sonoda, Alana Firl, Mark A. McNeilage, Mikaela J. Douglas, Tianchi Wang, Ria Rebstock, Charlotte Voogd, Paul Datson, Andrew C. Allan, Kenji Beppu, Ikuo Kataoka, Ryutaro TaoD O I:10.1038 / s41477-019-0489-6
U R L:https://www.nature.com/articles/s41477-019-0489-6

<詳しい研究内容について>
キウイフルーツが紐解く「植物が性別を手に入れた進化の仕組み」

<所属研究室のHP>
環境生命科学研究科・生物生産科学専攻・植物機能開発学講座・農産物利用学分野

<お問い合わせ>
岡山大学 大学院環境生命科学研究科
准教授 赤木 剛士
(電話番号)086-251-8337

 岡山大学 総務・企画部 広報課
(電話番号)086-251-7292

<JSTの事業に関すること>
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