岡山大学大学院 環境生命科学研究科

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エンドウ褐紋病に対する植物の抵抗性反応を解明

2017年07月04日

 エンドウ豆の生産(収量や品質)に深刻なダメージを与えるエンドウ褐紋病によって、欧米やオーストラリアなどでは収量が減少するなど、世界的な問題となっています。一方で、褐紋病に強い(病気にかからない)エンドウ品種はなく、褐紋病に対する抵抗性機構の詳細は全く知られていませんでした。
 岡山大学大学院環境生命科学研究科(農)の豊田和弘教授らの研究グループは、エンドウの近縁種に当たるタルウマゴヤシの種子コアコレクションの中から、褐紋病にかかりやすい系統と抵抗性系統を選抜。両系統における褐紋病菌の侵入と植物の抵抗性反応の様子について電子顕微鏡を使って詳細に調査しました。抵抗性系統では活性酸素種が急速的に生成され、「菌糸内菌糸(intrahyphal hyphae)」が頻繁に観察できました(図2)。また、菌糸内菌糸はストレス条件下でカビが自身の菌糸内に菌糸を伸展させて形成する構造で、植物の抵抗性反応の一つである活性酸素種の蓄積がその引き金となっていることを初めて明らかにしました。さらに、抵抗性系統では病原菌周辺で起こる局所的な抵抗性反応によって菌糸の生育が大きく阻害され、もはや正常に生育できない「死菌糸」も観察されることが分かりました。本研究成果は6月30日、スイスの科学雑誌「Frontiers in Plant Science」に掲載されました。

 褐紋病による菌糸内菌糸の観察例は初めてで、褐紋病抵抗性品種開発に大きなヒントを与えることが期待されます。



図1:エンドウ褐紋病
図2:抵抗性系統へ侵入したエンドウ褐紋病菌の周辺に蓄積する活性酸素種(左)と菌糸内菌糸および死菌糸(右).
図中の略語
(左)Ap:菌の侵入器官(付着器);Ih:侵入菌糸;ep:表皮細胞;me:葉肉細胞.白矢印は活性酸素種の蓄積部位を示している.写真内のスケールは 5μm を示す.
(右)ep:表皮細胞;iHh:菌糸内菌糸;Dh:死菌糸.写真内のスケールは 2μm を示す.

<論文情報等>
論文名:Ultrastructural and cytological studies on Mycosphaerella pinodes infection of the model legume Medicago truncatula
掲載誌:Frontiers in Plant Science, Volume 8
著 者:Tomoko Suzuki, Aya Maeda, Masaya Hirose, Yuki Ichinose, Tomonori Shiraishi and Kazuhiro Toyoda
DOI:10.3389/fpls.2017.01132

<詳しい研究内容について>
エンドウ褐紋病に対する植物の抵抗性反応を解明

<お問い合わせ>
岡山大学大学院環境生命科学研究科(農)
教授 豊田和弘
(電話番号)086-251-8357
(FAX番号)086-251-8388

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